2007年05月19日

籠城発砲事件 多くの疑問が残った警察の対応


 身近に潜む拳銃の恐怖を、改めて示した事件だ。愛知県警の対応を歯がゆく思いつつ見守った人も多いのではないか。

 「父親が拳銃を持って暴れている」という110番通報が発端だった。愛知県長久手町の現場に駆けつけた交番勤務の警察官が銃撃されて負傷し、SATと呼ばれる特殊部隊の23歳の隊員が射殺された。

 この元暴力団組員の拳銃男は、元妻の女性を人質に籠城(ろうじょう)を続けた。周辺地域の保育園や学校の休園、休校が相次ぎ、通行規制で自宅に帰れない人も出た。

 29時間ぶりに犯人を逮捕したが、悲劇的な展開になってしまった。警察は、いくつもの重い課題を突き付けられた。

 負傷したのは最初に急行した警察官だった。拳銃所持となれば、どんな不測の事態が起きるか分からない。家庭のトラブル処理に向かった警察官の死傷事件は過去にも何回か起きている。

 初動の態勢や幹部の指示に甘さがあったとみられても仕方がない。

 さらに警察は、負傷して倒れている同僚を救出するまでに、5時間余りも費やした。SAT隊員は、この救出活動のさなかに、周辺で警戒に当たっていて犠牲になった。前線の要員に万全の配慮を欠いては、組織全体の士気にかかわる。

 現場の状況が分からないから軽々には言えないが、籠城男を狙撃するなど、早期解決の方法はなかったのか。

 警察官に拳銃発砲をためらわせる空気が、まだ社会にはある。しかし、警察官に公然と刃向かってくる公務執行妨害事件も急増中だ。犯人を取り押さえることができず、警察官自身の身も守れないようでは、悪をのさばらすだけだ。

 SAT隊員の殉職は、発足以来30年間で初めてだという。ハイジャックやテロが起きた際、人質の救出や犯人制圧に当たる精鋭部隊だけに、警察庁の衝撃も大きい。防弾チョッキのすき間に銃撃を受けたとみられている。

 要員の配置場所を含め、現場指揮は的確だったのか、装備面に改良の余地はないのか、こうした点を徹底的に検証し、今後の教訓としなければならない。

 長崎市長銃撃事件、東京・町田市の暴力団員による立てこもり発砲事件などに続く凶悪な銃器犯罪である。銃が社会の隅々にはびこり、平穏な生活が脅かされている。しかも、その犯人は、多くが暴力団関係者だ。

 政府からも「一歩踏み込んだ対策が必要だ」という声が出始めた。銃器の根絶に国を挙げて取り組まなければ、一段と銃汚染が進み、逆戻りができない社会になりかねない。

19年5月19日1時53分 読売新聞 社説

籠城発砲事件 多くの疑問が残った警察の対応
posted by 爲藏 at 01:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 犯罪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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